H1 木造第3世代「製材VS集成材」対価を避けた中規模低層で架構美を競う 
 
この記事は「日経アーキテクチュア2018-10-11 木造第3世代製材VS集成材」について要約しています。木造第3世代とは、耐火要件を避けた中規模で、地域のシンボルになる架構美を競い合う世代のことです。本特集は製材を生かす第1パート、集成材を使いこなすパート2で構成されています。
 
 
H2 製材を生かす

パート1「製材を生かす」では、流通材にひと工夫加えて意外性を出した事例・中大規模木造の架構に、一般住宅用の流通製材を活用する試みが広がっていることが書かれています。事例として「熊本県総合防災航空センター」の20mを超える大スパンを実現した例、「柳小路南角」について書かれています。

H3 熊本県総合防災航空センター

熊本県総合防災航空センターは、防災消防航空センターと警察航空隊基地の2施設を合築しています。ヘリコプターが1機ずつ収められ、九州広域の防災拠点となっています。

建築の際は、特殊な架構は地元で木材を加工できない場合が多いため、流通材による大架構で「自分たちもできる」という地元をその気にさせる設計が施されました。

 

その結果、熊本県総合防災航空センターの屋根架構は20.93mスパンの木造トラスが間口26.39mにわたって910mm間隔で連続することになりました。その光景はまるで、鳥の巣のようであると表現されています。

 

この建築の一番の特徴は、主に住宅用として流通している120mm角の製材をメーンに使って屋根架構を構成していることです。また、流通材で大架構を築くために耐火要件を避ける必要がありました。そのため本建築は「軒高9m、最高高さ13m」に収めています。一方で、高さ7m超のメンテナンス用のホイルストクレーンが必要なことから、左右両端で高さが違うトラスが採用された結果、直上が片流れの屋根になっています。

 

この2つの格納庫の屋根トラスはいずれも、束材や斜材は120mm角の流通材、上弦材は断面が120×240mm、下弦材は120×180mmのスギ材が用いられています。トラスの接合部は、木材の支圧とボルトの引っ張りやせん断力で支持する設計になっています。そのため、屋根合板の割り付けに合わせてトラスが910mmで統一されています。

 

H3 柳小路南角

柳小路南角の特徴は、一見大断面集成材で柱と梁を組んでいるように見えるが、実はラフ材と呼ぶ、かんながけをしていない製材を束ねて柱と梁を構成している点です。そのため、ざらざらとした質感に仕上がっています。発注者の要望に答えるためには、集成材だとピカピカになりすぎるため、製材、ラフ材を束ねて力強い構造にすることになったがそれには複数の課題が存在した。

問題点は建物の1階と2階の床が鉄筋コンクリート造のスラブが求められており重量が大きくなり木造では水平力を負担するのが無理だということです。そのため水平力はRC造の耐震壁に委ねることになりました。

 

一方で梁は複数の製材をビスで接法した「重ね梁」を採用した。耐力と剛性を確保するために長ビスを数多く斜めに打って製材同士を接合したと記述している。

 

もう一つの問題点は、準耐火構造とするための燃えしろ設計であった。そのため柱については、外周の製材が焼失しても内側の4本だけで短期許容応力度を満たす設計にした。また重ね梁は、ビスで接合しており、隙間もないので、外周のビスがなくなっても持つということで建築確認をえたと記載されている。

 

H2 集成材を使いこなす

パート2「集成材を使いこなす」では、サイズや形状に自由度のある集成材を活用すれば、地域の象徴となる木造建築が実現しやすいことについて触れられています。

H3 富岡商工会議所会館

富岡商工会議所会館の1番の特徴は、米マツ集成材の斜め格子が生む長さ60mに及ぶ無柱の大空間です。この無柱の大空間は南北に延びる2枚の外壁と、折り連なった屋根面の格子状のトラスで構成することで実現していることが記載されています。このトラスを構成する木材の主断面は170mm角であり、調達のしやすさを勘案し、製材ではなく集成材が用いられています。接合部は、標準的な斜め材の交差部は、ほぞとボルトを組み合わせています。また屋根の谷部の梁まわりのように力が集中する部位には、鋼板の金物が挿入されている。このため金物は、材が取り付く方向に合わせて3次元に突き出す複雑な形状になっています。

 

H3 大船渡消防署住田分署

大船渡消防署住田分署は全国でも珍しい、車庫を含めて全て木造の消防署です。貫式木造ラーメン構造が採用されている。周辺の歴史的な街並みとの調和を図ると同時に、街をリードする木造建物になっています。この貫式木造ラーメン構造は、柱にはスギの300×300mm集成材が、梁にはカラマツの120×360mmの集成材が用いられています。

H3 由布市ツーリストインフォメーションセンター

由布市ツーリストインフォメーションセンターの特徴は、湾曲させた大断面集成材を4本使い、平面が十字になるように組まれている独立柱です。この十字柱には米マル湾曲集成材が使用されています。また上部ではそのアーチ梁と、波打つような曲線を描く2次アーチ梁が交差しています。日本の加工技術で制作可能な2次元曲げ材で作られています。

H3 集成材利用の流れと呼称

1986年に構造用大断面集成材のJASが制定、87年の建築基準法改正を受けて、「出雲ドーム」を初め、各地で大断面集成材を利用した大型公共木造建築が建築され始めました。この世代を第1世代と呼びます。その後、2010年に公共建築物等木材利用促進法が施行された後、技術基準の整備や規制緩和が進み、中高層木造建築が増えました。この頃の耐火集成材による大型化が実現した世代を第2世代と呼ぶと本書には記載がありました。

 

H2 まとめ:木造第3世代「製材VS集成材」

 

木造第3世代「製材VS集成材」対価を避けた中規模低層で架構美を競うについて要約しました。最後に内容を復習します。

 

「製材を生かす」では、流通材にひと工夫加えて意外性を出した事例・中大規模木造の架構が紹介されている

熊本県総合防災航空センターの一番の特徴は、主に住宅用として流通している120mm角の製材をメーンに使って屋根架構を構成していることです

柳小路南角の特徴は、一見大断面集成材で柱と梁を組んでいるように見えるが、実はラフ材と呼ぶ、かんながけをしていない製材を束ねて柱と梁を構成している点です

柳小路南角の問題点は①重量が大きくなり木造では水平力を負担するのが無理だということ②準耐火構造とするための燃えしろ設計である

「集成材を使いこなす」では、サイズや形状に自由度のある集成材を活用すれば、地域の象徴となる木造建築が実現しやすいことについて事例紹介されていた

富岡商工会議所会館の1番の特徴は、米マツ集成材の斜め格子が生む長さ60mに及ぶ無柱の大空間です

由布市ツーリストインフォメーションセンターの特徴は、湾曲させた大断面集成材を4本使い、平面が十字になるように組まれている独立柱である

1987年、「出雲ドーム」を初め、各地で大断面集成材を利用した大型公共木造建築が建築され始めた世代を第1世代と呼ぶ

2010年、耐火集成材による大型化が実現した世代を第2世代と呼ぶ

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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